【アイススケート】関大は団体3位。個人では中村が優勝

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◇第91回日本学生氷上競技選手権大会◇1月7日◇日光霧降スケートセンター◇

[7、8級男子最終結果]
1位 中村優(政策4)233.40
3位 本田太一(経2)189.61
21位 市橋翔哉(安全3)128.99

[7、8級男子団体結果]
3位 関大 56点

「表彰台に3人で上がれたというのはすごい幸せ」(本田)。学生最高峰の舞台で、関大男子が今年も表彰台に立った。特にこの日行われたフリーは、今大会をもって学生スケートの世界を離れる中村がショートプログラム(SP)に続いてパーフェクトな演技を披露し、大学をけん引。「いい背中は見せられたんじゃないかと思います」(中村)。個人では優勝を果たし、自身の学生大会引退に花を添えた。

前日、「僕的には、フリーの方が好きな曲」と、フリー進出を熱望していた市橋は、翌日見事にフリーのリンクに立っていた。冒頭の3回転ルッツはクリーンな着氷とはいかないものの、続く3回転トーループ+2回転トーループのコンビネーションなどを決め、会場を沸かせる。大好きな「Sparkle」の音楽が始まるステップでは、のびやかなスケーティングで映画「君の名は。」の世界を表現していく。

しかし、「跳んでも跳んでも全然終わらなくて」。本職であるペア競技とは異なり、4分間で7本跳ばなければならないシングルのフリープログラムに苦戦。後半に入ると、ジャンプの回転が抜けてしまうミスが目立つ。それでも、曲のサビ部分では、得意のレイバックイナバウアーを披露。この全日本インカレのためだけに作られたプログラムは、全曲通しての曲かけ練習もあまりできなかった中、演技後は膝に手を当てて苦しそうな表情を見せたが、最後まで滑り切った。

最終滑走で登場した本田は、完璧な演技を披露した前日とは異なり、「きょうは全然でしたね」と苦笑い。SPでは決まったトリプルアクセルだが、この日はきれいに入らない。渡米した今春からはジャンプを一から作り直し、一時は全く跳べなくなっていた。この日の朝の公式練習でも調子は良かったというが、「まだ許容範囲が狭くて、少し感覚が違うとダメになってしまう」と、今後へ課題を口にする。構成を落としながら滑ったその後は、転倒などの大きなミスはなく、コレオシークエンスでは雄大なイーグルを披露したが、「きょうは収穫はほぼないかな」と自身の評価は厳しい。

全日本選手権大会では、SP演技後に深刻な表情で自分のスケートについて考えたいと話していた本田。春、渡米の決断を語ってくれた本田はいつも通り明るかったが、それでも戸惑いや不安がなかったわけではない。「アメリカにいると1人の時間も多いので、考えることもあったり」。最も重きを置いていた日本最高峰の舞台で思い通りの演技ができず、結果もついてこなかったことで、不安はさらに増した。前日、会心のSPを終えた後でも、全日本の悔しさが消えることはないとはっきり言った本田は、この全日本インカレをまた新たな一歩として、来シーズンへと歩き始める。

そして、SPから個人として逆転優勝を飾った中村。「質のいいものが出せた」。最初に控えていたトリプルアクセルを2本、きれいに着氷すると、流れに乗って次々とジャンプを決めていく。後半のコンビネーションジャンプも完璧に決め、プログラムはクライマックスへ。

コレオシークエンス、ステップシークエンスでは、壮大な音楽に乗せ、しなやかで力強いスケーティングで観客の心をつかむ。スタンドも、リンクサイドの関係者席も、会場中が中村の演技に引き込まれ、気迫の「ロミオとジュリエット」を見守っていた。最後のスピンでは演技終了を待ち切れない拍手が沸き起こり、寸分の狂いも見せないままフィニッシュ。「『フリー、やっとできた!』という思いで」。ラストポーズを解くと、氷上で自身の演技に手を叩いた。

中村の競技に対する姿勢が変わった。以前から、目標として明確な順位などを語ることは少なかった。トリプルアクセルの成功や「ノーミス」など技術面での成功を目標に掲げ続けてきた中村。しかし今大会では、次戦への目標を尋ねると、「楽しく滑れたら一番いいのかなと。悔いなく終われたら一番いい」と話した。現役続行を表明しているものの、区切りとして見据える五輪まではあと3年。「悔いのないスケート人生にしたい」。理想のフィギュアスケートを追い求め、中村は歩みを止めない。

世界選手権大会などの大きな国際大会がテレビ放送され、注目を集めるフィギュアスケート。その中でこの全日本インカレなどの学生大会を、「一緒に頑張ってきた仲間を感じられる」場所だと織田信成監督は語る。個人競技であるフィギュアスケートだが、大学を挙げ、その誇りをかけて戦う。そして、大学の垣根を越え、今、リンク上で己と戦う選手をみんなで応援する。学生大会に出場する全てのスケーターが、ともに励まし合い、高め合い、それぞれのスケート人生を生きている。

それは関大男子の3人も同じだ。今大会終了後、世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会へと向かうため、再びペア競技に戻る市橋。一足先にシーズンを終え、アメリカで来シーズンへの準備を始める本田。学生大会を去る中村。仲間と一度離れ、それぞれの場所で日々成長する。そして3人のスケート人生の中で、ともに戦ったこの大会がかけがえのない1ピースとなるだろう。【文:宮西美紅/写真:竹中杏有果】

▼織田監督
「SP、フリーを通してそれぞれの選手が素晴らしい演技を見せてくれたんじゃないかなと思いますね。やっぱりこの(全日本)インカレって学生の日本一を決めるということですごく特別な大会で大学を挙げて戦うということで、フィギュアスケートは個人競技なんですけど、みんなそれぞれ関西大学に貢献したいとい思いが伝わるとてもいい演技をしてくれたと思います。力も出し切ったと思います。男子は、市橋くんがペアの選手ではあるんですけれど、シングルで出てほしいという声は前々からかけていて、今回シングルの選手として(全日本)インカレに出場してくれて、彼の場合はSPを通過できるか、フリーに進めるかというところが課題だったんですけど、見事にそれをクリアしていい演技をしてくれたと思います。女子は、3人の実力が拮抗している中で、それぞれの持ち味を最大限に生かして演技してくれたと思います。安原さんは最後の(全日本)インカレということで、練習から毎日見てきていたので、最後のステップはすごく胸に迫るものがありました。(世界選手権大会など国際大会が注目されがちだが)国際大会に出ている子たちの縁の下の力持ちが、この学生スケーターたちだと思います。というのも僕もそうだったんですけど、みんながみんな国際大会に出られるわけではなくて、一緒に小さい頃から練習してきた子たちは(全日本)インカレを目指して一緒に頑張っていく仲間だと思うんですよね。個人競技だけれど、(全日本インカレは)一緒に頑張ってきた仲間を感じられるというか。それがその学生スケーターとしてのいいところなんじゃないかなと。応援も大学は関係なしに飛び交うのってフィギュアスケート独特なんじゃないかなって思うので、そこが学生スケートのいいところだと思います。大学という派閥は関係なく、一緒に頑張ってきたから応援しあえる。今後の関大スケート部は安泰です(笑)。いい選手がたくさん関西大学たかつきアイスアリーナで育っていますし、関大で練習したいと思ってくれている他の地域の子たちもたくさんいるみたいなので、後は僕がそういう子たちの架け橋になって、関大に呼んであげたり、魅力を伝える役割を果たしていきたいなと思います」

▼中村
「やっと…やっとか、という感じで。主にフリーなんですけど、ノーミスがやっとできたなという感じです。(順位は)うれしいですし、あまり結果にとらわれずに自分のできることをやって、なおかつきょうは本当に楽しく滑れたので、それでこうやって結果がついてきて本当にうれしいです。人が見て、点数をつけてもらえる競技なので狙ってできる競技でもないので、自分の思うように滑る方が気持ち良くも滑れますし、気持ち的にもいいように迎えられるのかなと思います。できることでなおかつ質のいいものが出せたんじゃないかなと思います。(気迫のこもった演技だったが)気持ちは込めて滑ったつもりでいますし、自分の自己満足ではなくて、見ている方にどう伝わるのかなということを考えながら今回は滑ったので、本当に感じてもらえているかは分からないですけれど、そう言ってくださる方がいたらいいなと思います。(最後の全日本インカレだったが)寂しいですね。こっちに来て、ショート(プログラム)をやって、これで引退ってわけでもないし普通の試合と変わらないなと思ったんですけど、これで学生の大会に出るのが最後ってなると、今は寂しいなあというのがありますね。フリー大会には出ないです。(演技終了後、自分で拍手していたが)リンクサイドを見たら監督と田村先生が手を挙げて喜んでくださっていたし、自分も『フリー、やっとできた!』という思いで。深い意味はないです(笑)。(SP後からずっとフリーの話をしていたが)今朝も結構リラックスしていましたし、6分(間練習)も集中はしていましたけど、よく周りを見ながら滑っていました。6分が終わってリンクに入る頃から、自分に集中できたかなと思います。(全日本)インカレは、1年生の時は先輩がいて、先輩のおかげで過去優勝できたということもありましたし、逆に今回は自分が後輩を引っ張って優勝に導けたら一番かっこ良かったんですけど(笑)。それができなかった心残りはちょっとだけありますけど、いい背中は見せられたんじゃないかと思います。格好はつきましたね。現役を続けるつもりではいるんですけど、細かいところは決まっていないです。自分の中では3年後の五輪を目処に、区切りもいいのでそこを目標にやっていくつもりです。たとえかなわなかったとしても、悔いのないスケート人生にしたいなと思います。今はまだ目先の目標で精一杯ですけど、しっかり一つ一つクリアできたらと思います。目標は高橋大輔選手なので、人の記憶に残る選手になりたいなと思います。(ユニバーシアード冬季競技大会では)きょうみたいな演技ができれば一番いいですけど、そうそううまくいきそうにもないので、もちろんこれ以上の演技を、という目標は持ってやっていきますけれど、楽しく滑れたら一番いいのかなと。悔いなく終われたら一番いいのかなと思います」

▼本田
「きょうは全然でしたね(笑)。朝の調子は全然悪くなくて、むしろ(トリプル)アクセルが跳べるようになってから一番体も動いていて、いろいろ構成も考えながらやっていたんですけど、結果的にもう何もうまくいかなくて。アクセルももちろんですけれど、他のジャンプも構成をかなり落としてやっていたので、きょうは収穫はほぼないかなという感じです。でも昨日の貯金のおかげで結果的に団体という形では持ちこたえることができたので、そこは迷惑をかけずに済んで良かったかなと思います。きつかったです。やはり練習不足もあると思いますし、いろいろな要因はあったと思いますけど、きつかったです。まだまだお正月ですね。優くん(=中村)の演技もちょくちょく見ていて、完全に完璧な演技だったと聞いたので、俺もなんとか頑張るわって言ったんですけど全然ダメで。もちろん、個人としては悔しいですけど、団体として来ているので。3位をキープできたことは安心していますし、明治大学と同志社大学に次いで3位に入れたのでそこは満足しています。優くんは4年間やってきて最後の(全日本)インカレで、翔哉(=市橋)もシングルでわざわざプログラムも一から作って、1カ月間本当にみっちり練習してきてくれたのでありがたいですし、なんとか2人に恩返しというか、結果を残せればと思っていたので、個人としてはきょうは満足していないですけれど、表彰台に3人で上がれたというのはすごい幸せです。全日本まではアクセルも組み込めるような状態ではなくて、なんとか状態が上がってきて全日本に挑戦してああいう形で終わってしまったので、春からやってきたことがまだまだ自分の体に染み付いていないことは多くて。きのうの演技は良かったんですけど、まだ許容範囲が狭くて、きょうみたいに少し感覚が違うとアクセルもダメになってしまうので、そこに関してはこれから数を重ねていくしかないなと思っているんですけど。全日本の悔しさは全く消えることはないですし、今大会良かったところはあったんですけれど、(全日本の)悔しさを晴らせるところは今年の全日本だと思うので、それに向けてまたアメリカに帰って頑張るしかないなと思っています。(全日本の後は「自分のスケートについて考えたい」という話をしていたが)全日本だけじゃないんですけど、アメリカにいると1人の時間も多いので、考えることもあったり。ラファエルコーチ(=ラファエル・アルトゥニアンコーチ)を信じていないわけではないですけど、やっぱりどうしようという気持ちはありましたし、そこに全日本のあの演技でとどめを刺された感じはありました。全日本からの2週間、全てをやり切れたわけではないですけど、結果的に久しぶりにショートでアクセルが跳べて、多少報われたかなという感じはありますし、またやっぱり試合で跳べると自分の自信にもつながるので、来シーズンに向けてもちろん努力していくつもりではいましたけど、原動力になったかなと思います。大きな全国大会という意味では、(今季は)この大会が最後だったので、周りの選手はまだ国体があるので一足先にシーズンが終わるんですけど、その分プログラム以外の部分でも練習時間が増えると思うので、周りの人が成長するペース以上に自分自身が早いペースで成長しなければならないと感じていますし、やっとアクセルは跳べましたけど、4回転はまだまだ質も良くないので、試合でコンスタントに決められるような状態に持っていって(来季の)試合に臨みたいなと思います」

▼市橋
「きょうはきのうも言ったんですけど、僕の大好きな『Sparkle』っていう曲を使っていて、滑っていて頭の中に『君の名は。』の場面がよぎってきて、自分が今滑っているところは瀧くんと三葉がやっと出会えて、出会えたんですけどその後にお互いが手のひらに名前を書くんですけど、三葉が瀧くんの手に書いている最中に消えちゃうんですよ。かたわれどきが終わって。そこからお互いが名前を忘れちゃって、三葉が転んで名前を思い出せないって泣いている時に、そういえば手のひらに名前を書いたっていうのを思い出して、手のひらを見たら、そこに『好きだ』って瀧くんが書いてるんですよ。そこのシーンが本当に好きで、そのシーンを思いながら多少は滑っていたんですけど、やっぱりシングルってジャンプが7本あるので、跳んでも跳んでも全然終わらなくて、まだジャンプあるのかと思いながら、段々『君の名は。』のことを考える余裕がなくなって。最後の方は滑っているだけで精一杯になっちゃったので、もうちょっと滑り込みたかったなって思います。ステップから『Sparkle』のピアノが始まって、最後コレオシークエンスの時にイナバウアーをするんですけど、そこが最後のサビで。自分はイナバウアーがすごく好きで、サビもすごく好きなので、好きなもの同士がいい感じに合わさって、あそこは本当に気持ちよくイナバウアーができました。楽しかったですけど、最初コールされて出て行った時に、立ち位置を間違えて(笑)。慌てて本当の立ち位置まで行って、緊張はしていなかったですけど、ああなんか逆にいいかもなって自分で思いながら滑りました。それが良かったのかは分からないですけど(笑)。きつかったです。フリー作ったのが11月の最初の週とかで、全通しというか、フリーはほぼかけたことがなくて。ずっとSP落ちしたらダメだからSPばっかりかけてて、フリーを初めてかけたのがペアの全日本終わってからで。全通しは2回しかしていなくて、その後に10日間くらいジャンプを跳ばない期間があって。だから結局全通ししたこともチャラになるくらい曲かけをしていなくて、やっぱりきついなって思いました。前半はすごく瀧くんになれたと思います。前半はルッツはそんなに良くはなかったですけど、きのう失敗したトーループも2本決まって、アクセルも決まって、ステップを気持ち良く滑っているくらいまでは自分は瀧くんになっていて、三葉に出会えるかなって思ったんですけど、その後の後半のジャンプにパンクが続いちゃったり、疲れた姿を見せちゃったので、これじゃあ三葉に会えないなと思いました。すれ違っちゃった感じです。階段ですれ違うシーンがあるんですけど、映画ならお互いが振り返って、最後『君の名は』って言って終わるんですけど、僕の場合はお互い階段登ってすれ違って終わりって感じです。来年の(全日本)インカレにも男子の人数的に出ることになると思うので、それまで1年後とかにはなると思うんですけど、好きな曲だから使うと思うんですけど、その時には三葉に会えるように頑張ります。3月に世界ジュニア(フィギュアスケート選手権大会)が残っていて、2月から2人でカナダのモントリオールにまた練習に行くんですけど、今はペアの練習は全くできていない状態で、(三浦璃来=大阪スケート倶楽部の)足もだいぶ良くなってきて、滑れる状態にはなってきているので、あんまり時間はないんですけど、そこに向けて、今度はペアの選手としていい成績を残せるように頑張りたいと思います」