【アイススケート】対照的すぎる結果。中村、本田がSPに臨む

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◇第87回全日本フィギュアスケート選手権大会◇12月22日◇東和薬品RACTABドーム◇

[男子ショートプログラム]
5位 中村優(政策4) 77.11
25位 本田太一(経2) 55.56

全日本フィギュアスケート選手権大会男子シングルショートプログラム(SP)。第4グループの選手たちがリンクインすると、会場は異様なほどの熱に包まれた。温まり切った会場の雰囲気の中で6分間練習が行われる。全日本は怖い。多くのスケーターが口にするこの言葉が、この日は第4グループの空気に凝縮されているようだった。

その中で、関大から出場した2人は対照的な表情で演技を終えた。21番目に登場した中村は、冒頭に高さと流れのある美しいトリプルアクセルを決める。「1つ1つきっちり」。決して油断はしない。残る3回転ループ+3回転トーループのコンビネーション、3回転ルッツも着氷し、ジャンプの要素を全て成功させる。さらにSPに組み込まれている3つのスピン全てでも最高難度のレベル4を獲得。いつもクールな中村には珍しく、演技後にはガッツポーズが飛び出した。

納得の演技ができたのには理由があった。昨年の全日本ではSP、フリーともにミスが続き、思うような結果が出せなかった。調子は悪くないのに、本番で発揮できない。同じ失敗はしないと、「練習の仕方であったりとか、取り組む意識や姿勢を一から見直した」(中村)。また、平昌五輪銀メダリスト・宇野昌磨(トヨタ自動車)や今季現役復帰した高橋大輔(関西大学KFSC)らと滑った6分間練習は、観客の盛り上がりが他組とは一線を画していたが、近畿選手権大会(=近畿ブロック)や西日本選手権大会でもその熱気を体感していたため、「慣れていたかなと思うので、あまりその辺りは気にならなかったです」とその表情は涼しい。5位でSPを折り返すのは過去最高位となるが、「できることを出し切りたい。練習通りをしっかり出せれば大丈夫という自信がある」と、その心に油断はない。

一方、中村の後に高橋を挟み23番で滑走した本田は、フリーに進出できないという悔しい結果に。今春には拠点をアメリカに移し、スケート漬けの毎日を送っていたが、「今までの9カ月間何のためにやってきたのか正直分からない」(本田)。映像用のインタビューを終え、ペン用の取材を待つ間も、ミックスゾーンの柵に手を置き、呆然と肩を落とした。

アメリカでジャンプを一から作り直した。昨シーズン成功していたトリプルアクセルが全く跳べない日々が続いたが、先週帰国する前に着氷に成功。公式練習でも何度も決め、手応えを感じていた。しかし、本番では回転不足の判定を受け、続くコンビネーションのファーストジャンプ、3回転ルッツも回転不足。ルッツジャンプは転倒してしまい、ジャンプ以外の取りこぼしもあり得点を伸ばすことができなかった。

「切り替えるには少し時間がかかるかなと思います」。いつもインタビューにははっきりした口調で答える本田が、言葉に詰まりながら、小さな声で絞り出すようにそう話した。「残念、惜しかったねで済まされる話ではない。春からやってきたことが何一つ結果として出ていないので、もう一度自分のスケートについて考えるべきかなと思います」。今は前を向くことができなくても、自身と向き合った時間が本田を強くするはずだ。

男子フリーは24日17時4分から開始され、中村は自身初の最終組での滑走となる。【文:宮西美紅/写真:多田知生】

▼中村
「とりあえず大きなミスなく、ノーミスで滑り切ることができたので現時点でできることは全て出せたかなと思います。昨年の全日本では大きな失敗をSP、フリーと続けてしまったので、まずはこのSPはできることを出して終わりたいという気持ちがあったのでまずホッとしている気持ちがあるんですけど、あさってフリーがあるのでまた気持ちを引き締め直してフリーに臨みたいと思います。(しっかり滑れたということだが)去年の失敗もあって、自分の練習の仕方であったりとか、取り組む意識や姿勢を一から見直したので、そういったところも要因になったんじゃないかと思います。(フリーは)トリプルアクセル、最初の2つが一番大きな得点源になってくるところなので、まずはそこをしっかり決めて、流れに乗って練習通りをしっかり出せれば大丈夫という自信があるので、油断せずに集中してやりたいと思います。きょうと同様に自分に集中して、点数や順位はあまり気にせず、できることを出し切りたいと思います。去年も調子は良かったんですけど、本番だけミスしてしまって、今回もずっと調子がいいままこれていたので、同じ失敗をしないようにっていう強い気持ちと、練習から良かったので『いける、大丈夫』というのがあったので、気持ちの面でだいぶ去年より強くなったというか、成長したのかなと思います。(6分間練習から盛り上がっていたが)雰囲気は全日本とはまた別なんですけど近畿ブロックや西日本でも高橋選手と一緒に試合してきましたので、そういった雰囲気は今シーズン慣れていたかなと思うので、あまりその辺りは気にならなかったですね。近畿ブロックと西日本選手権で全日本のような雰囲気だったので、今シーズンはそこで慣れていたので。高橋選手に感謝というか、(その2試合が)いい練習になったなと思います。近畿ブロックから『これは全日本かな』というような雰囲気だったので。全日本の方が断然すごいんですけど…。アクセルを降りても他にもあと2つジャンプが、3回転+3回転も残っていたので、あまり油断せず1つ1つきっちりという気持ちでやりました。フリーはきょうと同じように自分にしっかり集中して、練習通りやりたいと思います」

▼本田
「気持ちの整理がついていないんですけど、春に移籍してやってきたことが何一つ出せなくて、今までの9カ月間何のためにやってきたのか正直分からないです。僕のようなレベルの選手は、この全日本に向けて1年間やっていますし、全日本で結果が出なければ正直スケートをやっている意味がないと思うので、悪かった部分はいろいろあると思うんですけど、切り替えるには少し時間がかかるかなと思います。ジャンプを一から全て作り直すような形でやってきて、先週頃やっとトリプルアクセルが跳べるようになってきて、自分の中でもやっと歯車がかみ合ってきたのかなという思いがあったので、きょうの演技に関しては何と言っていいのか分からないです。スケート人生が終わるわけではないので、次の試合に向けて切り替えるしかないのかなと思います。1年間で一番大きい大会であるのは間違いないですし、ラファエルコーチ(=ラファエル・アルトゥニアンコーチ)は今年の全日本が最終目標じゃないし、長いスパンで僕と真凜(=本田真凜)のことを考えてくださっているのは理解しているつもりなんですけど、それでも僕には残されたスケート人生も長くないですし、早く結果がほしいという気持ちはすごくあって。やっと先週くらいから状態が上がってきて、なんとか間に合ったかなという気持ちがあったんですけど、曲かけの中での練習が足りなかったのか、技術がまだ確立されていなかったのか、試合で成功する状態でなかったのかなと今考えると思うんですけど、それでもこの点数はちょっとひどすぎるというか。残念、惜しかったねで済まされる話ではないかなと思います。約半年間、トリプルアクセルが全く跳べない日が続いて、今シーズン中の試合も全く挑戦せずにここまで来て、やっと先週ですかね、日本帰ってくる前に跳べるようになって。もちろん全日本でアクセルなしで戦うわけにはいかないので、挑戦というか、やったんですけど、こんな無様な結果になってしまって、何のためにやってきたのかちょっと分からないです。結果が出ないならズルズルやるつもりは僕はないので、未来というか『また来年頑張ります』とか軽く言える年齢でもないですし。ラファエルコーチには最低2年頑張ろうと言われたので、あと1年間、猶予というかそれはあるとは言ってくださっているんですけど、去年に比べてもかなりひどい演技をしてしまって、春からやってきたことが何一つ結果として出ていないので、もう一度自分のスケートについて考えるべきかなと思います」