【アイススケート】宮原、五輪で会心の『蝶々夫人』を舞う

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◇第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)◇2月23日◇江陵アイスアリーナ◇

【フィギュアスケート/女子シングルフリー】
4位 宮原知子(文2) 146.44
【フィギュアスケート/女子シングル最終結果】
4位 宮原 222.38

まさに、世界がその美しさに息をのんだ。宮原知子の『蝶々夫人』。たおやかで繊細なムーブメントと、芯の強さが光った4分間は、見る者の心を奪った。

真っ直ぐな瞳で濱田美栄コーチの目を見つめ、言葉に耳を傾けた。少し緊張した面持ちだったが、大歓声に迎えられスタート位置へ。最終組1番滑走。ショートプログラム(SP)で世界最高得点を記録したアリーナ・ザギトワ(OAR=オリンピック・アスリーツ・フロムロシア)や世界女王エフゲニア・メドベデワ(OAR)も同組に控えることもあってか、6分間練習から観客は異様なほど興奮していた。

そんな雰囲気を一瞬にして変えてみせる。音楽が流れ、演技が始まると、澄んだスケートで会場を包み込む。余計な欲や思惑は一切感じられなかった。ただ一途に、自分の演技をするために集中していた。

最初の3回転ループを難なく着氷すると、次は難しい3回転+3回転のコンビネーションジャンプ。SPで綺麗に決まったこの連続ジャンプは今日もしっかりはまった。スピードに乗って幅のあるルッツを着氷すると、セカンドに思い切りのいいトーループをつけ成功させる。3回転フリップも決め、前半のジャンプは完璧。豊かなピアノの旋律に乗せ、美しいフライングキャメルスピン、足替えのコンビネーションスピンを披露する。

中盤はアップテンポな曲に合わせたステップシークエンス。上半身を大きく使いながら、足元は細やかさを忘れない。まるで宙を舞うかのように軽やかにステップを踏む。後半に差し掛かると、ジャンプが続く。先月末の四大陸選手権大会でアンダーローテーションを取られた3回転ルッツ+2回転トーループ+2回転ループは、最後に両手を上げてきっちり着氷。続くコンビネーションジャンプも1つ目に高さと幅のあるダブルアクセルを跳ぶと、3回転トーループも危なげなく決めた。鬼門と言える3回転サルコーも申し分ない質で成功させると、演技はいよいよクライマックスへ。

夢見ていた大舞台に広がる景色を、胸に刻んでいるようだった。隅々まで見回すように銀盤を大きく使ったコレオグラフィックシークエンス。雄大なスパイラルでは、いくつもの困難を乗り越え、オリンピックシンボルの入ったリンクで演技できる喜びを爆発させているようだった。

コレオシークエンスに溶け込むようなダブルアクセルを決め、最後はレイバックスピンで演技を締めくくる。穏やかな曲調が、その上品さをより一層引き出す。観客が静かに見守る中、そっとラストポーズを取ると、次の瞬間には大きなガッツポーズが飛び出した。観客は魔法が解けたように沸き立ち、熱い歓声を送った。

惜しくもメダルには手が届かなかったが、146.44はパーソナルベスト。4年に一度しかない特別な舞台で、SP、フリーともに過去最高の演技を見せた。さらにプロトコル(採点詳細)を見てみても、12個の要素の中でマイナスの評価を付けたジャッジは0人。回転不足が課題だった3回転ルッツ+3回転トーループも1.00の加点が付き、スピン、ステップは全て最高難度のレベル4だった。

何よりも、全ては演技後に見せた笑顔が物語っている。五輪という最高の舞台で、過去最高を記録する演技ができたこと、見たもの、感じたこと全てを吸収して、ここからまた歩いていく。その先に、今よりもっと輝く自分と出会うことを信じて。【文/写真:宮西美紅】