【アイススケート】宮原、全日本選手権4連覇!「次のスケート人生に大きな一歩」

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◇第86回全日本フィギュアスケート選手権大会◇12月23日◇武蔵野の森総合スポーツセンター◇

【女子フリー】
1位 宮原知子(文2) 147.16
【最終結果】
1位 宮原知子 220.39

レイバックスピンを終え、ラストポーズ。そのあとは一瞬の間をおいて大歓声が氷上に押し寄せる。スタンディングオベーションの中飛び出したガッツポーズ。次の瞬間には手で顔を隠しながら感極まったように表情を崩した。宮原が全日本選手権大会4連覇。今年初めに発覚した左股関節の疲労骨折のあとも度々襲ってきたたくさんの困難を乗り越えて、本当の意味で女王が帰ってきた瞬間だった。

息をするのもためらわれるほど極限まで張りつめた緊張感の中、宮原が見せたのは「今の自分の力を本当に出し切れたフリー」。けがで戦線離脱を余儀なくされてから、ずっと照準を合わせてきた大会で思い描く『蝶々夫人』を舞った。

「せっかく頑張ってきたのに、全然いいジャンプができなくて…」。フリーのあとミックスゾーンでショートプログラム(SP)を振り返った宮原は、そう声を詰まらせた。1年間この舞台に懸けてきただけに、SPのジャンプの回転不足は悔しさが強かった。「もうフリーでやるしかない」。けが以降だけではなく、3年間守り続けてきた全日本女王の座など、それ以前からもずっと積み上げてきたものがある。ここで無駄にはしたくなかった。

滑走直前、名前をコールされると、観客席では宮原を応援するたくさんのバナーが揺れた。「自分らしい蝶々夫人を滑ってきて」。濱田美栄コーチからそう声を掛けられ、運命のリンクに飛び出す。

普段通りの時間をかけてスタート位置につくと、異様に張りつめる空気の中、冒頭の3回転ループを着氷する。続いて、SPで回転不足を取られた3回転ルッツ+3回転トーループも降りる。3回転フリップも成功させ、回転の安定したフライングキャメルスピン、足替えのコンビネーションスピンを披露する。ステップシークエンスでは沸き起こる手拍子に乗り、軽やかに舞う。

後半に待ち受けていた3連続ジャンプは、「ちょっと根性で踏ん張った」。最後の2回転ループでランディングがきれいに流れなかったものの堪えると、ダブルアクセル+3回転トーループの難しいコンビネーションも完璧に着氷。公式練習では回転が抜けるミスも見られた3回転サルコーもきれいに決め、演技はクライマックスへ。

壮大な音楽に乗ったコレオグラフィックシークエンス。スパイラルでは喜びのような涙のような表情を見せる。ダブルアクセルも成功させると、最後は静かにレイバックスピンで演技を締めくくった。

まだ順位が確定していなかったミックスゾーンでのインタビューで「本当にやり切って終えることができたので、もう何位でもいいという気持ち」と振り返った会心の演技は、ジャッジの評価もほぼ完璧だった。3回転+3回転の1つ目、ルッツのアンダーローテーション、わずかに着氷が詰まった3連続ジャンプ以外は全ての要素で加点され、スピン、ステップも最高難度のレベル4。演技構成点も5項目全てで9点台をマーク。特にコレオグラフィックシークエンスは2.10の加点が付く圧巻の出来だった。「次の自分のスケート人生に大きな一歩を踏み出させてくれた演技」と、自信を持つ。

けがや平昌(ピョンチャン)五輪日本代表最終選考会など、「特別」の要素が詰まっていた今年の全日本選手権。五輪日本代表女子の椅子はたった2つしかないが、枠の1つは全日本選手権優勝者に与えられるため、宮原は代表入りをほぼ確実なものとした。フリー後に五輪について尋ねられ「もし行けるなら楽しみで仕方がないと思う」と笑顔を見せた宮原。代表選手発表の時を待つ。【文:宮西美紅/写真:多田知生】

▼宮原
「本当にやり切って終えることができたので、もう何位でもいいという気持ち。SPでせっかく頑張ってきたのに、全然いいジャンプができなくて…もうフリーでやるしかないと思った。このフリーでは自信を持っていけたので、そこはすごく良かった。(濱田コーチへは)まだまだお礼は言い尽くせないが、少しでも今日の演技で恩返しできたかなと思う。(今日の演技は)次の自分のスケート人生に大きな一歩を踏み出させてくれた演技だった。こういう風に(全日本で最高の演技を)するって思ってずっと過ごしてきたが、本当にしっかりやるには最後の最後は自分の気持ちが大事なので、ここまで頑張ってきて、ここで無駄にしたくないっていう気持ちが、すごくこの全日本に来て込み上げてきた。(ガッツポーズは)今までで1番自分の力で踏み切って、自分の力でしっかり降りたっていう感触を得ることができたので、もうこれはガッツポーズするしかないと思って思わず出た。せっかくずっと全日本で優勝してきて、今回(五輪代表へは)優勝しか確実な道はないっていう場面で優勝しないわけにはいかないっていう強い気持ちがあったので、『絶対行きたい』っていう一心で滑っていた。(3連続ジャンプは)結構緊張していたが、練習で悪いジャンプや失敗はなかったので、本番だけ失敗するわけがないって自分に言い聞かせながら、そこはちょっと根性で踏ん張った。ジャンプはいつもより始めるのが遅くて、今まで以上にジャンプで苦しんだときもあったが、試合に来てからは絶対跳べる風になっていたので、あとは試合でいかに気持ちをコントロールするかっていうところが課題で。それをここで克服できなければ、日本代表になる権利はないと思って頑張って『ここだけは!』と踏み切った。(涙のわけは)この全日本でしっかり復活するためにずっと頑張ってきて、SPでせっかく頑張ってきたジャンプが全然いいものができなかったので、それが悔しくてフリーではもうやるしかないって思いながらやって。本当にそれでできたので、そのうれしさ。(滑走前、濱田コーチからは)『自分らしい蝶々夫人を滑ってきて』と言っていただいた。(演技後は)お互い泣き合っていたのであまり覚えていないが、ここまでよく頑張ったと言っていただいた。(五輪に)もし出られるってなったらもう1回泣いちゃうかもしれないが、もし行けるなら楽しみで仕方がないと思う」

▼メダリスト会見

――今回の全日本の感想は?
宮原 今日のフリーは今の自分の力を本当に出し切れたフリーだったので、とてもうれしいです。

――改めて今、五輪に対してどんな思いでしょうか?
宮原 本当に目標にしていた舞台なので、まだ自分が出られるって思うとあんまり想像もつかないですし、実感も全く湧かないんですけど、すごくワクワクしています。

――先ほど濱田コーチが、10月の時点で『五輪は5年後も狙えるから』ってことを落ち着かせる意味で言ったとおっしゃっていたんですけど、その後宮原さんが急激に良くなっていったそうですが、そのときの気持ちを教えてください。
宮原 実際に5年後でも行けるんだからと言われたときは、自分の中ではまだ平昌も諦めていませんでしたし、たとえこの全日本までに間に合わなくても5年後があるんだからってそういう捉え方をしていたので、この全日本にしっかり合わせられるように頑張りたいっていう気持ちは変わらずに、10月はジャンプを始めて苦しい時期にそれだけは心の中に留めていました。

――自分のベストに近い演技だったと思いますが、その決め手になったものはなんだったのでしょうか?
宮原 SPで自分の納得いく演技ができなくて、せっかくここまで頑張ってきたのにこんなところでウロウロしていられないって気持ちがあって、絶対にフリーではやってきたことをしっかり出したいという強い気持ちが演技につながって、今回すごくいい演技ができたのかなって思います。

――どんな思いであのガッツポーズが出ましたか?
宮原 今回は今までと違って、本当に心の底からガッツポーズできたなと思っていて、完璧まではいかない演技だったかもしれないんですけど、それでも今の自分の中では本当にいい演技ができたので、ここではガッツポーズするしかないと思ってやりました。

――表彰台に上ったときにどんなことが頭をよぎったか教えてください。
宮原 やっとここまで、全日本まで来ることができて、ここからが自分のスタートだなって思って表彰台に立ちました。

――先ほど濱田先生から10月に5年後でもいいからと言われたときに、平昌を諦めていなかったとおっしゃいましたが、それはその言葉に対する反発だったのか、それともコーチの言葉が親心とかそういう風に受け止められたのか、どうだったのでしょうか。
宮原 全く反発ではなくて、平昌のあとはもちろんまだまだ自分には足りないものがあって、たくさんやっていかないといけないことがあって、その次の五輪ではより成長した自分を見せられると思うので、5年後はもっと今年よりもいいスケーターになると思うっていう風に言っていただいたので、より自分の力になって、もちろん次も行きたいし、今回も行きたいという気持ちがあったので、自分の力になりました。