【野球】久米主将の目に涙。45年ぶり日本一の夢、ここで潰える

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◇第48回明治神宮大会1回戦対創価大◇11月10日◇明治神宮野球場◇

関 大 000 010 000=1
創価大 000 020 00X=2

(関)阪本大、山本―久米
(創)杉山、小孫―大河

またしても、関東の壁に阻まれた。45年ぶりの日本一を目指し、聖地・明治神宮野球場に乗り込んだ関大野球部。大学の部開幕戦で、3年前の同大会2回戦で敗れた関東5連盟第2代表の創価大とマッチアップしたが、あと1点が遠かった。

1-2と1点ビハインドで迎えた9回裏2死二塁。一打出れば同点の場面で、久米健夫主将(人4)が打席に向かった。「俺が決めてやろう」。打席に入った久米は自身に暗示をかけるとともに、大きく「よっしゃー!」と叫び気合いを入れた。

大声援を送る一塁側関大スタンドに、「打ってくれ」と願う関大ベンチ。逆転への機運は高まった。しかし、野球の神様は残酷だった。勝負はカウント0-2からの3球目。創価大2番手・小孫が投じた変化球に主将のバットは空を切った。

1バウンドしたのを確認した久米は一縷の望みに懸け一塁へとヘッドスライディングをしたが、無情にも一塁審が「アウト」をコール。この瞬間、久米主将率いる野球部の日本一への旅に幕が降ろされた。

整列に向かうため、塁上から立ち上がる熱血漢の目には光るものがあった。「本当に終わってしまった」。夢が道半ばで途絶えた悔しさを押し殺し、スタンドに向け最後の声を振り絞る。「応援ありがとうございました」。最敬礼をし周りに顔を向けると、むせび泣く4年生部員の姿が。「最高の同期」と認める男たちの表情に胸が熱くなった。「付いてきてくれてありがとう」。「KANSAI」の「1」を背負い、最後まで厳しく戦い抜いた男は背中を震わせ聖地を後にした。

この試合の先発を任されたのは阪本大樹(経4)だ。エース右腕は「調子は悪くなかった」と、初回から快調に飛ばす。4回まで強力創価大打線を1安打に抑え、今秋のリーグ戦で62回連続無失点を打ち立てた本領を発揮した。しかし、先制点をもらった直後の5回裏に落とし穴が待ち受けていた。「高さが中途半端になってしまった」と、先頭の5番松村真、6番下小牧に連打を浴びる。その後、犠打で1死二、三塁とされると、代打海老原に左犠飛を浴び試合は振り出しに。同点のまま粘りたかったが、9番松本に右前適時打を打たれ逆転を許した。阪本大は試合後「抑えられた」と唇をかみ、エースの責任を口にした。

7回途中からは二枚看板の一角・山本隆広(人3)がマウンドに上がる。1死二塁とピンチを迎えた場面で決死の継投策を取った指揮官の気持ちに、快速右腕は2つの三振で応えた。

一方の打線は、5回に7番久米の左前打を足掛かりに相手投手の暴投で先取点を奪ったが、チャンスであと1本を出すことができなかった。4番を務めた倉川竜之介(文2)は「取り切る力が全国との差」と振り返る。4度も三塁に走者を置きながら1得点に終わった関大に対し、創価大が三塁まで進んだのは逆転した5回のみ。試合展開としては関大が押していただけに、課題を新チームに持ち越すこととなった。

「自分に厳しくやってほしい」。久米は最後のミーティングで後輩たちに訴えかけた。主将就任以来、180人を超す部員の先頭に立ち厳しくやってきたからこそのメッセージだ。どうしても届かなかったあと1点。残された3年生以下の部員にとっては、大きくのしかかる宿題となる。その答えを導き出す方法は、全国で勝ち星を挙げることのみだ。そして、そのことが4年生部員たちの流した悔し涙に報いることだと信じ、一回り大きく成長した関大野球部で悲願の日本一に挑み続ける。【文:嶋健太朗/写真:奥井健太、高木満里絵、松山奈央】

▼早瀬万豊監督
「阪本大の立ち上がりは決して悪くなかった。むしろ良かったと思う。5回に相手に隙を突かれてしまった。練習中にフリーバッティングで返ってきたボールが当たり自分が怪我したことでサインを少しだけ変えたりした。選手がサインを見間違えるミスもあった。山本をリリーフで出すことで流れを変えたかった。こちらが1点しか取れなかったのは、相手が上だったから。組み合わせが決まったときから(3年前のことについて)思うのはあった。現在の方がチームの状態も良いし、勝てると思っていたが敵わなかった。(来年は阪本大が抜けるが)山本もいるし、新戦力が出て来るはずだから期待している。阪本大には最後に勝たせてやりたかった。社会人でも十分活躍できると思う。頑張ってほしい」

▼久米主将
「関大でやってきた4年間が本当に終わってしまった。3回やっても関東のチームに勝てなかった悔しい気持ちと、ここで終われるうれしい気持ちが半々。(最後の打席は)俺が決めてやろうと思っていた。キャプテンとして最後に決められなくて本当に情けない。最後は三振に終わってしまったけど、周りのみんなが声を掛けてくれて、応援団の人たちの力がすごくて、応援してくれた全ての人に感謝したい。自分たち4年生は私生活でも支え合って、野球に関しても必死にやってくれた。ここまで付いてきてくれたことに感謝したい」

▼阪本大
「調子は悪くなかった。抑えられたと思う。最初は無失点ということを心掛けていた。先頭を出してしまって粘り切ることができなかった。自分は今まで真っすぐを主体にやってきたけど、今日は高さもなにもかも中途半端でそろえてしまって。(逆転された)次の回で修正して減らしてはいったけどという感じ。自分が1戦目を投げるということで、中心的な存在でやらせてもらうから勝たないといけないという責任があった。リーグ戦の京大戦の時に真っすぐを続けて負けて、そこから修正した。今日は緩急を使って抑えたけど、今日も(真っすぐを続けてしまって)また同じ負け方をしてしまった。高めのストレートが多くなった。(最後の打者が久米だったこと)最後が久米だったのは、もう神様からのプレゼントなんじゃないかって。打ってくれって願うしかなかったし、もし無理なら仕方ないという気持ちだった。久米とはバッテリーとして組んできて、何度も2人で話し合って、野球だけじゃなくて人間的にも成長できた。これから先進む道は違うが、いつかまた一緒にできたらなと思う。(山本へ)最後無失点に抑えてくれた。自分は神宮に3回行ったが、1回も勝つことはできていない。神宮に出るだけじゃなくてもっともっと上を目指して勝ち上がれるようになってほしい。(リーグ戦から振り返って)リーグ戦を通じて、その場その場だけじゃなくて1回から9回までの考え方が身に付いた。球数も少なく抑えられて、そういう面ではこの秋は成長できたと思う。(これから社会人でやっていくが)上を目指して、はじめからアピールしていく。先発を目指してやりたい。だけど今のままでは全然。変化球の精度をもっと上げて、いずれは一番上の世界で。(最後に)関大にきて本当に本当に良かった。いいチームといい監督に出会えて感謝しかない。山口(高志)さんや監督との出会いは本当に大きいもの。どんなに打たれても自分を使ってくれて、おかげでいろんな経験ができた。その経験を生かして上の世界を目指してこれからも頑張っていければ」

▼山本
「今日はスライダーとフォークを意識して投げた。チェンジアップも少し。打たせて取るピッチングが理想ではある。去年はセットポジションで投げていたが山口さんと話し合ってフォームを変更した。身体に力があるとおっしゃってくださっている。それがハマって帰って来られたと思う。(7回)2アウト取ってからの2人目のバッターは真っ直ぐのイメージが良かった。3球とも。勝ち進んだら東洋大学は意識していた。中学の頃チームが同じだった同級生がいてライバル視している。リリーフはあまり経験がなく、いつもだったらランナー背負って打たれることがあるが打たれなかったのは良かった。上(プロ)を目指すならリリーフもあるのでしっかり準備しないといけない。理想は8割ぐらいの力で140㌔後半を投げること。いつもならコースを使えるが今日は抑えようという気持ちが強かった。途中から行った回に関しては力みはなかった。こんなもんじゃないと思っている。真っすぐで空振りが取れるのは自分のバロメーター。真っすぐは伸びがあったと思う。(阪本さんには)ずっとリーグ戦一緒に勝ってもらった。気楽に行けた。来年からは1戦目投げることになると思うので、その上でチームに流れを呼び込むにはゼロに抑えないといけない。阪本さんにはコントロールの面では及ばないので学ばせてもらうところがたくさんあった。(プロにはいくか)まだわからないが監督と話して決めたい。(理想としているのは)山口さんのピッチング。僕より身長低いが真っ直ぐでどんどん押して行っていた。近いのは楽天イーグルスの則本選手や山口コーチ。ピッチングは強気でどんどん押して行ける。(アウトがほとんど三振だったが)強気で押せて真っすぐが荒れていなかったから。1巡目だったというのもあると思う。やっぱり先発で結果を出して、日本一になりたい。来年の春はチーム一丸となってうまくかみ合わせて。まず全国で1勝、日本一目指したい。」

▼倉川
「絶対に勝ちたかったので、悔しい。最初は浮き足立つところもあったが、段々と慣れてきて自分のプレーができた。創価のピッチャーも良かったが、こっちも負けていない。チャンスは何度も作れたが、チームの課題であるあと1本を出すことができなかった。真っすぐは速かったが、関西学生にもあれぐらい投げるピッチャーはいる。真っすぐに自信のあるピッチャーなので、ピンチになれば真っすぐが増えると思って狙っていたが、結果が出なかった。(全国の差は)点を取りきるところだと思う。自分たちはチャンスを作っても取れなかったが、相手は1回のチャンスで2点取ってきた。関大の応援の力をすごく感じた。いつもリーグ戦で応援の力を感じているが、それ以上の声援で大勢の人が来てくれたのに勝てなかったのが悔しい。今年は4年生が引っ張ってくれた。自分たち下級生がプレーしやすい環境を作ってくれた。一緒にあと3試合戦いたかった。今年は今年で、あしたからはまた競争が始まる。競争に勝てるようにしていきたい」