【ソフトボール】安平女子ソフトに幕。最高のチームへ「ありがとう」

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◇第49回秋季関西学生リーグ戦(2次部別)最終節対武庫女大◇10月10日◇武庫川女子大学総合スタジアム◇

武庫女大 010 001 1=2
関  大 000 000 0=0

(武)立目―福元
(関)杉本、萩森、平木―江口

ふらふらと力ない飛球が上がった。7回裏、2死一、二塁。代打の木村浩子(人1)がカウント2-2からの7球目を打ち損じると、打球は無情にも武庫女大の捕手・福元のミットに収まる。一塁走者の安平泉主将(人4)は二塁をオーバーランし捕球を確認すると、軽く天を仰いだ。1年5カ月続いた安平体制が最後に聞く「ゲームセット」の声。ついにこのチームにも終止符が打たれた。

「やり切った」。安平の瞳に涙はなかった。7月の西日本インカレで引退を迎える予定だった4年生。しかし、同大が全日本インカレを棄権したことにより行われたチャレンジマッチを勝ち抜き、気付けば約3カ月も引退時期を延ばしていた。そのため、「何回も覚悟はできていた」と安平は話す。本当のラストとなったこのリーグ戦に対しては「後悔はない。楽しかった」と振り返った。

この日もソフトボールを心から楽しむ関大らしさは健在だった。1つ1つのプレーにベンチは盛り上がり、グラウンド上の選手の表情も終始明るかった。また、山元麻莉絵(人3)が前日に語った「自分たちも『これが最後』だと思って、4年生との気持ちのギャップがないようにしたい」との言葉。下級生も「先輩たちに花道を」と雰囲気を作った。

さらに、リーグ最終戦のスタメンには4年生全員が名を連ねる。「4番捕手」の江口実里(人4)は7回1死から、粘りに粘った13球目をレフト前に運びソフトボール人生最後の打席で有終の美を飾ると、とびっきりのガッツポーズが飛び出した。また、扇の要として後輩3投手を最後までリード。背番号「7」の副将なしにこのチームの躍進はなかった。

「3番中堅」の杉田裕子(人4)は「最後の打席(見逃し三振)に悔いがある」と口にしたが、4回には前方への打球をダイビングキャッチするなど、ハッスルプレーでチームを引っ張った。外野手唯一の4年生としてセンターからチーム全体を見渡し、これまで何度もピンチを救ってきた。

指名選手の守備で「三塁手」として今季初スタメンの濱田実佑(人4)。これまでは代走や守備固めとして存在感を放ってきた。この試合も持ち前の堅守でしっかりとゴロをさばく。ピンチの場面ではマウンドへと歩み寄り、ピッチャーに声を掛け続けた。また、「最後一緒に4回生全員でプレーできてうれしい」と、笑みを絶やすことはなかった。

縁の下の力持ち、仲川知里マネージャー(人4)も最後の一戦を思う存分楽しんだ。試合中のスコアはさることながら、兵庫県立山崎高時代にソフトボール部の4番打者だった仲川が放つ外野ノックは、試合前に欠かせなかった。

そして、このチームの象徴である安平は「5番一塁」で先発。2回の第1打席には、気迫のヘッドスライディングで内野安打をもぎ取るなど、強い気持ちを示し続けた。「みんなにキャプテンにしてもらった」と謙そんしたが、グラウンドでは常に感情を前面に出し、誰よりもソフトボール部のことを考え続ける姿は確実にチームに波及した。

試合後、下級生から4年生に記念のアルバムが贈られる際、次期主将の山元は目を腫らし感謝の意を述べた。その姿を見た安平は白い歯をこぼしながら、そっと山元を抱き寄せる。高校時代からのチームメイトだった主将から主将への系譜。関大ソフトの未来が託された瞬間だった。

気丈にふるまっていた安平だが、この日、実は2度涙を流していた。1度目は試合前の円陣でのことだ。吉末和也監督が発した「安平キャプテン、元気ですかー!」との言葉。力一杯の声で背中を押されると、こらえていた感情が溢れ、掛け声が震えた。2度目も指揮官の言葉だ。「1部におられるのも4年生のおかげ」。5人で最後のあいさつに向かった際に送られた、これまでの苦しさをそっとねぎらう一言に目頭を熱くさせ、最敬礼で奉謝した。

この試合をもって4年生は引退となるが、5人が残したスピリットは今後の関大ソフトの指標となって残ることだろう。試合終了後には、早くも下級生だけでミーティングが行われ、新チームの時計が動き始めた。「今年が本当に最高のチームになったと思うので、これを超えられるチームを下の代には作ってほしい」。安平は下級生に期待を込めた。

リーグ戦の最終結果は2勝6敗で8チーム中7位。決して、華々しい結果ではない。だが、試合中の盛り上がりや、試合会場でのあいさつ等の態度の部分では、1部のどのチームにも負けていなかった。これこそが関大の良さであり、4年生が求め続けた景色だった。

数々の感動をありがとう。「釈迦力」を旗印に、関西一、いや、日本一魅力のあるチームを作り上げた偉大な5人のソフトボーラーは、充実感に満ちた笑顔でグラウンドを去った。【文/写真:嶋健太朗】

▼安平主将
「(引退を迎えて)不思議な感覚。2歳くらいからソフトボールをやっていない時期がなかったので、終わるのが不思議。(きょうの試合は)ランナーは出ていたけど、あと1本出なかったのが関大らしいというか、下の代は1本出せるように冬につなげてほしい。雰囲気も良くて楽しかったし、プラスな終わり方。やり切った気持ちが大きくて清々しい。(2勝6敗という結果については)こんなに負けたらあかん。失点を減らして、もっと技術を上げていかないといけない。今年はいいチームになったと思うので、関大の良さであったり残すところは残して、変えるところは変えて自分たちのチームを後輩たちには作ってほしい。終わってみれば、もうひと伸びできたとは思うけど、後悔はない。何回も終わりと思っていたし、覚悟もできていたからここまで楽しくやれた。このリーグ戦は全部楽しかった。西カレで引退が伸びることが決まって、インカレ以降にもう一回チーム力が伸びて結束が強まった。最後まさかあんなに泣いてくれるとは思わなかった。いい終わり方。今年が本当に最高のチームになったと思うので、これを超えられるチームを下の代には作ってほしい。雰囲気はほかの4年生が中心になって、みんなが作ってくれた。同期にはみんなそれぞれに尊敬するところがあるし、ここまでチームのことをやってもらって申し訳なさみたいなのもある。(次期主将の山元に対しては)気負いすぎずに頑張ってほしい。楽しむことを忘れずに、今年のチームを超えられようにしてほしい。今年に入ってからはずっと楽しかった。しんどかったけど、面白かった。自分は本当に何にもしていない。みんなが自分をキャプテンと呼んでくれて、キャプテンにしもらった。がんばらなと思えたし、みんなに『ありがとう』と言いたい。みんなに頼らんといいチームが作れなかったし、本当にみんなのチーム」

▼江口
「もう引退か…実感が沸いていない。最後の打席は後悔しないように、西カレは最後見逃しで終わっていたから絶対に見逃さないようにストライクは全部振るつもりでいった。1死だったので、フォアボールはないなと思っていた。集大成の打席で打ててうれしかった。走るよりもガッツポーズが出てしまった。打席の中でも、応援がすごく聞こえて打ててよかった。チームが1部に残れたのは良かったけど、目標の3位はできなくて、もっとうまくならないと、全員がレベルアップしていかないと難しい。後輩はいい経験になったと思うので、次につなげてほしい。4年間は長いようで短かった。自分たちの代は長すぎて濃かった。いいチームだったと思う。最後はやっていて楽しかった。楽しそうやなって思ってもらえることを目指してきたので、よかった。(後輩に対しては)自分らと同じことをやらんでもいい。工夫して、残すとこは残して、捨てるところは捨ててもっといいチームを作って結果を出してほしい。親には感謝しかない。きょうも福井から応援に来てくれた。最後にヒットを打ててよかった」

▼杉田
「大学で初めて大きいけがをして、手術もして入院もした。続けられるかどうかってところでお医者さんから『治らんかも』とも言われた。選手生命が心配された中でもなんとか最後までやれてうれしい。1年の秋に足首をねんざしたときにじん帯が3本伸びた。治りかけたときに痛いながらもやって、2年の2月にも同じところをけがした。軟骨がはがれて間接に軟骨が入るような状態で走るときとかにたまに痛みがあったが、戦い続けた。けがしたときにお母さんは『絶対大丈夫』と言ってくれたし、同期は『待ってるから』と言ってくれて心強かった。自分にないものを持っている同期だった。4回で1人だけ外野だったので、内野は信頼して任せっきりで。打順的にも自分が3番で、4、5が4年生だったので、信じて後は任せていた。負けた時も誰かを責めることなく、上級生のミスととらえて励まし合うじゃないけど、安心感というか誰かをカバーできていた。言わなくてもお互いに思っていることはわかっていたし、相手のことを考えすぎる学年って言われていたけど、それが最後はいい方に出て考えが行動に出ていたと思う。後輩に対しては『ありがとう』と言いたい。関大として取るべき行動は今の後輩ならやってくれる。悔しいけど、自分たちよりは強いチームになるとは思うので、良さは引き継いで新しいカラーのチームにしてほしい。けがしたときはソフトボールもういいかなって思ったこともあったけど、いざ引退となると、10年間以上続けたソフトボールをしない生活がどうなるかわからない。それでも、今後は指導者としてソフトボールとつながると思う。最後は『4年生のために同じ気持ちでやろう』って言ってくれた。行動であったりプレーを見てくれたと思う。武庫川に0-2で惜しい試合をして、個人的には最後の打席(見逃し三振)に悔いがあるけど、チームとして悔いはない」

▼濱田
「振り返ると3年半は早かった。これまでやってるときは、あと少しとかは思っていなかったけど、秋リーグまであと何日ってなってからは早かった。きょうの試合は楽しかった。早く感じた。今までのリーグは勝敗にこだわるところがあったけど、きょうの試合は『楽しもう』と話していてそれが雰囲気に出た。一つになれていたし、守っていてもベンチからの声が聞こえていてチーム全員で楽しめた。自分たちは1年の時に1部でやっていたけど、後輩は1部をほとんど知らなくて、自分たちの代で1部の舞台に戻って、来年の春も1部でやれる環境を作れてよかった。3回生は新チームが不安だって言っているけど、3回生の個性を出しつつ、3回生のチームを自由に作ってほしい。その中でも、関大の良さは出せるようにしてほしい。(同期に対しては)同期の中で自分以外が試合に出ていて、活躍する姿はうれしかったし、自分がつらいときは常に気にかけてくれていた。ずっと思っていることだけど、この同期でよかった。最後一緒に4回生全員でプレーできてうれしい。関大を選んでよかったと本当に思う。同期だけじゃなくて、先輩にも後輩にも恵まれた。勝ち負け以上のことを学べたし、人としての部分も関大だから成長できた」

▼仲川
「負けたけど、ここで終わりって決まっていたし悔しいはない。打てた子、打てなかった子いるけど成長になったと思うし、あと1本出ないのが今の関大。言い方は悪いかもしれないけど、関大らしい終わり方かもしれない。去年の中村さんの代から楽しむ風潮ができて、きょうの最後の試合で完成ではないけど、確立された。ここまで楽しむのは関大の良さだと思うし、勝負プラスで楽しむところがほかのチームにはない所だと思う。去年の秋にアジアの大会にマネジャーとして行かせてもらって、いろんなアジアの国のソフトボールを知った。そこで、今の日本のチームにない純粋にソフトボールという競技を楽しむ姿があった。このめっちゃ楽しそうにソフトをやる純粋さを持ち帰ることができればと思っていた。そういう選手がもっと増えればうれしいし、もっとうまくなりたいという気持ちを持ってやってほしい。自分たちの代で勝ちたかったから悔しさもあるけど、勝っても負けても後に残せるものがあったからいいラストだと思う。この1年半は本当に濃い時間だった。4回生がわがまま言ってリーグ戦に出させてもらった。新チームで試したい気持ちもあったと思うし、後輩の引退時期を狭めてしまったけど、9月のインカレ以降は自分たちのためにやってくれた。3回生が自分たちのことを思ってくれてるってわかって、この試合を迎えられてこれまで伝えたかったことが伝わった気がする。最後に山元が泣くなんて思わなかったし、最後にお互いが思っていることを受け取れた。いい終わり方だと思う」