【コラム】「釈迦力」に夢を見て

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まさにドラマの連続だった。秋の2部残留、春での1部昇格、奇跡の全日本インカレ出場。昨年5月に主将に就任した安平泉(人4)体制もはや1年と5カ月を数える。ソフトボール部女子。彼女らが「釈迦力」をスローガンに戦い続けてきた日々もあと2日で終わりを迎えようとしている。


▲保護者も含めた集合写真で「釈迦力」ポーズ

「(1部に)上がりたい気持ちはあったけど、上がるだけの力がなかった」。安平は昨秋をこう振り返った。主力に好不調の波があっても固定メンバーを崩せず、勝負所で流れを変える選手も見当たらない。二塁のレギュラーだった今橋この実(情2)が右ひざのじん帯を痛め、シーズンを棒に振った時、チーム全体で大幅なコンバートを余儀なくされた。その時、一塁の守備に就いたのは、控えのピッチャー陣。選手層の薄さは明らかだった。

秋シーズンでの昇格を逃した試合後、私は吉末和也監督に質問をされた。「今のチームどう思う」。突然の問いに戸惑った。だが、意を決し「いい時と悪い時の雰囲気が全然違うと思います」と返答した私に、指揮官は「確かにその通りやな」とうなずいたのを鮮明に覚えている。

「変わったな」。私は今春のリーグ初戦で感じた。長く厳しい冬を乗り越えた彼女らの目つきは確かに違った。さらに、これまで以上に引き締まった体には強さと自信がみなぎっていた。オフシーズンの猛練習のたまものだ。「なんでこの練習をするかもしっかりと説明していた」と安平ら4年生が取り組んだ意識改革は実を結ぶ。


▲チームを引っ張て来た4年生と吉末監督

そして、経験豊富な1年生が加入し、厚みを増した選手層は数段上がっていた。俊足の濱田実佑(人4)、髙橋真奈実(人2)は代走として、小技が使いたいときには代打として田村朱里(人2)が控える。一発長打を狙う時はけがから復帰した今橋が出番を待った。ソフトボール特有のリエントリーを生かした早め早めの選手交代で序盤の流れをしっかりつかみ、重量打線で一気に畳み掛ける。平木琴実(人3)、杉本樹菜(人2)、萩森ちひろ(人2)の3投手もリレーで試合を作り、1部昇格の歓喜をもたらした。5月に行われたチャレンジマッチでは、全日本インカレ出場権を逃したものの、骨折した佐伯瞳(社2)に代わってスタメン出場した小山真実(人3)が1回戦の立命大戦でサヨナラ打を放つ。全員が主役になりうる空気感と、誰かが欠けても戦力が落ちないチーム力は秋とは見違えるものがあった。


▲小山のサヨナラ打で勝利し、ベンチを一斉に飛び出す

その後、7月に宮崎で行われた西日本インカレ。関大は1回戦で至学館大を下したのち、2回戦で環太平洋大に敗れた。4年生はここで引退。の、はずだったが、同大が全日本インカレを棄権したため急きょチャレンジマッチが行われることに。思わぬ形で訪れた運命の大一番は大体大と立命大との総当たり戦だった。

大体大戦を2-0で制した30分後にプレイボールの声を聞いた立命大との一戦は死闘となる。最終スコアは延長9回11-9。この試合のハイライトは、7回に江口実里(人4)がかっ飛ばした同点弾だろう。実はこの日、関大は江口不在の危機だった。試合当日、4年生の江口にとっては、今後の人生を左右する採用試験が行われるはずだった。悩みに悩んだ末、リクルートスーツではなくユニフォームに袖を通す決断をする。それほどの不退転の決意で臨んだ副将の一発に、安平はチームメイトから隠れて目頭を熱くした。江口は試合後、「今日こっちに来てよかったです」と笑顔で話した。そこに関大でソフトボールを続けてきた結晶を見た。


▲7月16日、チャレンジマッチ立命大戦で本塁打を放った江口

全日本インカレでの1回戦敗退から約3週間後。4年生にとっては正真正銘の最終章となるリーグ戦が先月23日に幕を開けた。関大はなんとか1部残留は果たしたものの、現在1勝4敗と目標の「3位以上」がかなり厳しい状況となっている。また、残す3試合は園女大、神親和大、武庫女大と強豪ぞろいだ。しかし、私は彼女たちに期待してしまう。また何か奇跡を起こすのではないかと。そして、今なら昨秋の問いにもこう答えられる。「関大女子ソフトは関西一魅力のあるチームです」と。【文:嶋健太朗】


▲1部昇格果たし安堵(あんど)の表情を浮かべる安平主将

 

 ――後記――

関大スポーツ編集局は3年生のシーズン終了とともに代替わりを迎えます。そのため、私が彼女たちを記者として取材できるのも、あと残り3試合。2015年9月23日に初めてソフトボール部女子を取材してから、きょうまで30試合(オープン戦含む)でペンを握り続けてきました。恐れ多いことに試合会場や練習に赴けば、部員全員が挨拶をして下さり、温かい気持ちになります。保護者やOGの皆様にも大変お世話になり、感謝してもし切れません。また、1部昇格時に私を胴上げしてくれたことは、記者冥利に尽きる出来事でした。さあ、残り2日間。とびっきりの笑顔をカメラに向けてくれることを心待ちにして、グラウンドへと足を運ぼう。

(関大スポーツ編集局・ソフトボール担当)